【Player’s History】むった – Team SAGA【連なる屍に立つデッキビルダー】

 自分の知っているプレイヤーがデュエル・マスターズの公式番組であるデュエチューブリーグの生放送に映っていた。

 しかし、そこで繰り広げられていた光景は衝撃的なものだった。

 殿堂カードである、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を叩きつけて2勝していたのである。

 もちろん、デッキコンセプト自体は新カードである《暴覇斬空SHIDEN-410》をメインに据えた高速ビートダウンデッキだったのだが、試合中に引いてしまった殿堂カードを使わないことはないだろう。殿堂カードは試合を決めうるほど強力だからこそ殿堂カードなのだ。

 結局、むったは2試合とも隕石を降らせてゲームに勝利。DTLの新メンバーとして大きなインパクトを残した鮮烈なデビューを飾った。もちろん、公式生放送のコメント欄は大盛り上がり。
 対戦環境で使われるようなガチガチのデッキが出てくることが多いDTLで、新弾のカードのプロモーションになりつつも、エンタメ性があるデッキを組んできたことは賞賛されるべき功績である…のだが…。

 何も考えずにこの試合を見ると、アポロヌスを叩きつける人のようなイメージが強くなってしまうと感じたのだ。
 彼がDTLの選手として選ばれたのは、デッキ構築の力や環境理解などの面が優れているからであり、なんというか、そういったイメージが定着しそうなことはむったという男らしくないと思った。

 彼は《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》のようなビートダウンを使って勝つというよりは、墓地ソースやコンボデッキを好むプレイヤーのイメージが強い。それは彼の歩んだ長い年月を振り返ると分かるはずだ。


 彼が表舞台に立つまでの年月はかなり長いものだった。

 時は遡った2013年頃。エピソード3の時期。
 筆者は当時でいうところの公認大会であった、デュエルロードでむったと初めてデュエルマスターズをした。場所は東京都西東京市にある、カードショップスピリッツという店で大会があったのがきっかけだったように思う。

 当時のむったは墓地ソースを好んで使っていた。《戦略のD・H アツト》や《フェイト・カーペンター》などでせっせと墓地を増やしては、《百万超邪 クロスファイア》や《暴走龍 5000GT》で相手のシールドをブレイクしていた。
 当時の筆者は常に相性有利の【白刃鬼】を使っていたため、かなり酷いことをしていたと思う。デッキ相性による暴力でボコボコにしながら、仲良くしてもらいつつ、教わることが多かった。


 そしてその2年後の2015年。革命編が始まったころにむったの姿をカードショップスピリッツで見かけることが減っていった。
 私生活の問題もあったようだがこの時期からCSサポートが始まったおかげで、デュエル・マスターズの競技的な側面が変わり始めたからだろう。

 今ではとても考えられないだろうが、それ以前にもCSという文化は有志のプレイヤーによって行われていたものの、CSサポートなんてものはなかったため、公式からの競技イベントの促進は文字通りデュエマの競技シーンに革命をもたらした。

 その煽りを受け、むったと彼の所属しているチームspiritsの戦い場は2017年を境に主にCSへと移って行った。
 拠点となるショップがスピリッツからCSが出来るキャパのあった、旧RMC、現在のカードジムへと移っていったのも影響していたのかもしれない。

 そしてチームspiritsの一員だった彼は、ここからその才能を発揮し始める。

 新章DMとほぼ同じタイミングで現在のDMPランキングが始まると本格的にCSへと赴くようになり、競技シーンへ。
 DMGP5thでは配信卓に映り、彼の十八番である墓地ソースで勝利を収める。当時を知る人の中では配信卓で唱えられた《スパイラル・ドライブ》は印象に残っているのではないだろうか。


 そして双極編の始まった2018年。

 まず彼の所属するチームはジョーカーズでループをする【ジョラゴン】の基盤を39枚まで作り上げ、リルクの入賞を皮切りにそれはテンプレートとして広がっていった。
 もともと店舗で「《ジョット・ガン・ジョラゴン》を2体並べればなんとなくループしそうだ」という仮説を持ったプレイヤーから知見を得て試していたところに《ポクチンちん》が登場し、大竹花屋などのプレイヤーと相談しながら《燃えるデット・ソード》で相手のリソースを全て奪うループルートを開拓。その構築は全国へと広がっていった。

 強力な墓地メタである《ポクチンちん》がリリースされたということは、墓地ソースにとっては逆風となるのだが、この年は墓地ソース愛好家にとっては革命的なカードがリリースされた。
 その名を《龍装鬼 オブザ08号 / 終焉の開闢》。これ以降、この男が作成する墓地利用デッキのほとんどに、このカードか《一なる部隊 イワシン》が搭載される。

 そして墓地ソースで超CSⅡでベスト8に入賞し、ついに公式の大型大会でその名が記録される。

金沢超CSⅡ 決勝第2回戦:むった vs. ユーリ

 【ジョラゴン】、【デスザーク】、【轟轟轟】などが戦っている環境での【墓地ソース】躍進だったことは快挙であり、のちにこの試合でのシーンが《爆撃男》のフレーバーテキストに刻まれるほどだった。

 快進撃は、その後も続いていく。

 水単ムートピアに《歩く賄賂 コバンザ》を搭載して安定4キルデッキへと成長させ、新弾発売からすぐにCSへ持ち込み自身で動画にして広めるなど、新章DMから双極編にかけてそのチューニング力は遺憾無く発揮された。
 《歩く賄賂 コバンザ》の発見がなければ【ムートピア】は環境に姿を見せなかったかもしれないし、4キルデッキの立ち位置を取るデッキがない環境になっていたかもしれない。2ブロックフォーマットが発足した年を大いに盛り上げてくれた。


 そして翌年の2019年。後世に悪名高いシーズンとして語られる超天編の年も彼は大きな爪痕を残していった。

 むったの超天編は《ドドド・ドーピードープ》から始まった。発売日よりも前にむったはその強さを見抜いており、発売日当日にチームメンバーとともにメンバー分の《ドドド・ドーピードープ》を集めて回っていた。
 GRの展開力とGRクリーチャーによるゲーム性の変化を察知して環境を戦っていったのだ。その中でGRクリーチャーで唯一の高パワーとWブレイカーの強力さに気づくのは、当時のプレイヤーにも難しかった。

 秋ごろには【火水万軍投】を《*/零幻ルタチノ/*》と《一なる部隊 イワシン》の組み合わせでルーティング性能を向上させたリストを考案したりしたが、特に大きな衝撃をもたらしたデッキは彼の十八番である、あのデッキだった。

 同年12月。《BAKUOOON・ミッツァイル》の殿堂入りが決まり、世は大ドッカンデイヤー環境へとうつろう冬。SNS上で2ターンGTという言葉が流れてきた。
 チームメンバーだったなおがCSの決勝戦で起こしたその文字列の衝撃は計り知れないが、それはこのデッキによるもの。

 【零龍墓地ソース】のビルドである。
 《零龍》の復活の儀と《暗黒鎧 ザロスト》を利用すれば、最速2ターン目にGR召喚を封じる《暴走龍 5000GT》を召喚して攻撃していけるこのデッキは、【カリヤドネ】や【バーンメア】と並び立つほどのデッキパワーを誇っていた。


 そして十王編の始まった2020年度後期。墓地ソースは新たな凶悪なデッキへと変貌する。

 かつてZwailanceの代名詞の一つでもあった《不敵怪人アンダケイン》を利用した【オカルトアンダケイン】の登場である。
 
 【オカルトアンダケイン】の基盤を一から作成したわけではないが、彼は入賞したリストを眺めると早期に《フォール・クロウラー》へ辿り着き、《龍装鬼 オブザ08号 / 終焉の開闢》の採用などリストを最適化させる。
 大型大会での実績を残せぬまま消えていったデッキだったが、墓地を利用したデッキあるところにむったの影があったといえる出来事だった。


 しかし《不敵怪人アンダケイン》が殿堂入りしても、むったのフシギバースは終わらなかった。
 2022年の超CS京都を境にむったは墓地利用の新たな可能性を世に知らしめることになる。

 【水闇シヴァンリンネ】のビルドによって。

 墓地を肥やしてから《不死の墓守 シヴァンリンネ》で大量展開してフィニッシュ。使用難易度が高かったおかげで使用率が伸び悩むデッキだったのが残念だったが、《龍頭星雲人 / 零誕祭》をすぐに取り込んで仕上げてきたのには感動すら覚えた。


 しかし、これだけ完成度の高いデッキを世に送り出しても、本人は納得していなかったようだった。

 調整している仲間は大型大会で上位入賞を果たしたり、全国大会へと出場していたりしているにも関わらず、どれほど頑張っても成果につながらないのが、自身の成績が上がらないのが悩みの種になっていたようだった。
 ちょうどこの時期からブシロードよりShadowverse EVOLVEがリリースされ、彼はGP7thの優勝者であるえんがわとも調整をするようになるが、えんがわは輝かしい成績を残すのに、自分は成果に繋がらないのを気にしていた。

 だが、それでもむったのやることは変わらなかった。デュエル・マスターズを楽しみ続けることが大事だった。
 強化されたテスタロッサを使った【テスタDOOM】や、【マトリクスループ】に《邪魂転生》を入れて最適化するなど、近年になっても新たなデッキを編み出し続けてきた。

 flat-工房や本日のデュエルマスターズなどの動画では演者として、デュエル・マスターズの楽しみ方を発信し続けてきた。

 だからこそ、デュエチューブリーガーとしてDTLに参戦するところまで辿り着いた。

 確かに、近年のDMPランキングを走っているわけではない。CSなどの大会で多くの勝ちを積み重ねてきた他の選手とは違う経緯での参戦になったことは事実ではある。
 それでも他の選手や視聴者の多くが、彼のデッキ構築の腕と、ゲームへの理解が高いことを知っているから。

 何より彼はDTLへ出たがっていた。flat-工房秋葉原店のデュ礼講イベントで試合の解説をしている側ではなく、選手として戦いたがっていた。
 その根底にはもっとデュエル・マスターズを盛り上げたいという想いがあるから。

 だからこそ、これから彼は自分の力で面白い試合、面白いデッキを僕たち視聴者に見せてくれるだろう。

 新しいカードの使い方や可能性を楽しいエンタメとして見せてくれるだろう。

 そんな彼が加入したSAGAの今後を、デュエチューブリーグの試合を、ぜひ見てほしい。《暴覇斬空SHIDEN-410》を場に出して、それを《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》に侵略させた時のようなワクワク感をまた体験させてくれるはずだ。面白いデッキは彼から生まれてくる。

 だからこそ、筆者はデュエチューブリーグ第1節のむったを見て、こう思ったのだ。

 彼は本当はアポロヌスを叩きつけるような人ではない、と。


 こんなこと書いてると、歴戦のにいちゃん達と公式ライターから「あいつはSpiritsを神格化しすぎ」って言われそうだけど、カードジムの常連一同、応援しています。

この記事を書いた人
Fei

実績なし。実力もなし。発起人に学生だと勘違いされたままスカウトされ参加。
E1期からデュエルマスターズをはじめ、千葉県市川市2ブロック村で育つ。「あっ。」って言ってからプレミに気付くタイプなのは玉に瑕。2ブロック村とアドバンス村を応援している。やろう、2ブロック。

Feiをフォローする
選手紹介
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました